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» 2020年07月27日 11時30分 公開

湯之上隆のナノフォーカス(28):半導体産業はコロナに負けない! 製造装置市場の動向を読み解く (1/4)

コロナ禍にあっても半導体産業は強いようだ。特に半導体の微細化は止まるどころか、むしろ加速しているようにすら見える。今回は、製造装置市場の動向を、過去も含めて読み解いてみたい。

[湯之上隆(微細加工研究所),EE Times Japan]

コロナ騒動でも半導体の微細化は止まらない

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 新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の感染拡大が止まらない。この原稿を書いている2020年7月20日、世界全体で、感染者数の合計は1430万人、累計死者数も60万人を超えた。

 コロナが終息する気配は一向になく、むしろ悪化の一途をたどっており、諸外国はいまだ鎖国状態を続けている。その結果、製造業では、需要が消滅し、さらに部品や材料のサプライチェーンが分断され、巨額の赤字を計上するなど、決算の見通しが立たない企業が続出している。

 ところが、半導体産業では、コロナの影響がほとんどないように見える。例えば、微細加工技術のトップランナーである台湾TSMCでは、最先端露光装置EUV(極端紫外線)を用いた5nmノード(以下、ノードは省略)の量産が立ち上がっている。また、10月からは3nmのリスク生産が開始され、2021年前半に量産移行する。さらに、2nmの開発が本格化しており、2021年後半には、そのリスク生産が開始される見込みである。

 そしてこの動きに、韓国Samsung Electronicsも追随しようとしている。すなわち、世界中がコロナ騒動で大混乱に陥っていても、半導体の微細化は止まるどころか、むしろ加速しているようにすら見える。

 では、半導体と製造装置の出荷額についてはどうだろうか?

半導体と製造装置の出荷額

 図1に、半導体と製造装置の出荷額について、1991年〜2019年までの実績値と、2020年以降の予測値を示す。

図1:半導体と製造装置の出荷額動向(2020年以降は予測値) 出典:WSTSおよびSEMIのデータを基に筆者作成(クリックで拡大)

 WSTS(World Semiconductor Trade Statistic、世界半導体市場統計)の予測では、2020年の半導体出荷額は、メモリ不況となった2019年に対して、3.3%上昇して4260億ドルになる見込みである(関連記事:「COVID-19による打撃は避けられる? 半導体業界)。若干、メモリ不況からの回復速度が鈍るものの、コロナの影響はほとんど無いと言える。

 一方、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International、国際半導体製造装置材料協会)によれば、2020年の製造装置の出荷額は、2019年に対して4%減少するが、2021年には対前年比で24%成長し677億米ドルに達すると予測されている(参考:SEMIプレスリリース)。従って、製造装置については、ことし(2020年)は若干コロナの影響を受けて減速するが、2021年は2018年のメモリバブルを超えて過去最高の出荷額になる見込みである。

 以上から、半導体も製造装置も、コロナ騒動の影響は限定的であり、2021年以降は再び成長路線に戻っていくと言えよう。これは、コロナによってスマートフォン、デジタル家電、クルマなどの需要が急減した一方、世界的にテレワークが普及したため、PCなどの端末やデータセンター需要が急拡大したことによると考えられる。

半導体と製造装置の出荷額の共通点と相違点

 半導体も製造装置も、「コロナなんぞには負けない!」ということが明らかになった(あくまで予測であるが)。ただし、半導体と製造装置の出荷額推移には、共通点もあるが、相違点もある。

 図2は、2000年のITバブル時の値で規格化した半導体および製造装置の出荷額の推移を示している。どちらも、ITバブル時にピークがあり、リーマン・ショック後の2009年に大きく落ち込み、2018年のメモリバブル時に大きなピークを持つことが分かる。すなわち、両グラフの上下動の傾向は一致している。

図2:2000年で規格化した半導体と製造装置の出荷額動向 出典:WSTSおよびSEMIのデータを基に筆者作成(クリックで拡大)

 しかし、違いもある。半導体出荷額は、ITバブルで落ち込んだ後、すぐに回復し、2004年にはITバブルの水準を超えた。その後も、リーマン・ショック後の落ち込みを除けば、ほぼ右肩上がりに市場は成長し、2018年にはITバブル時の2.3倍に到達した。

 一方、製造装置の出荷額は、ITバブル後に大きく落ち込んだ後、半導体の出荷額のように順調に回復していない。2007年と2011年に、ITバブルの水準にかなり接近したが、その壁を越えられなかった。ITバブルの壁を超えることができたのは、今から3年前の2017年に入ってからであった。

 つまり、2000年のピークを超えるのに、17年もの歳月を要したのである。なぜ、これほど時間がかかったのだろうか? また、なぜ、2017年に入って、製造装置の出荷額が急成長したのだろうか?

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