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» 2017年03月13日 11時30分 公開

世界を「数字」で回してみよう(40) 人身事故(最終回):人身事故を「大いなるタブー」にしてはならない (2/9)

[江端智一,EE Times Japan]

(1)乗客が感じる「怒り」の数値化

 この連載では、特に「怒り」に着目し、読者の皆さんにも、「怒り」に対するアンケートをお願いしてきました。その最初と現在の結果を以下に示します。

 若干減っているものの、「人身事故」に腹を立てているという人が多数であるという事実に変化はありませんでした。

 ところが、アンケート結果からは明らかである「怒り」が、コンテンツとしてはほとんど表現されていないのです。評論、ブログ、SNSその他を調べてみたのですが、「腹が立つ」の記述を見つけるのは難しいです(「そのようなコメントしかできない人」は別ですが、そもそも、そのような人は少ないです)。

 これは、死後にあれば、その人を侮辱するような言説は控える ―― いわゆる「死者にむちを打たない」ことがマナーとされているということもあると思います。

 しかし、無礼な後輩の説「台風に向かって『死ねぇぇぇ!!、台風ぅぅぅ!!』と叫ぶような人はいない」が、その答えの本質なのかもしれないと思うようになってきました(関連記事:飛び込みにまつわる「6つのなぜ」に新たな仮説が続々?)。

 つまり、飛び込み自殺が、当事者ではコントロールできないもの(うつ病など(後述))によって発生していることが、徐々に社会に浸透してきているのかもしれません。

(2)乗客の現実の「損害」の数値化

 「飛び込み自殺」によって平均70分の時間が奪われるという数値は、国土交通省から提供してもらった、過去11年間分のデータから導き出しました。

 具体的な被害金額については、状況によって大きく金額が変化しますが、私がシミュレーションで算出したザックリとした金額であれば、こちらにあります。

 いずれにしても、「飛び込み自殺」によって、私たちが被った被害については、それを回復する方法が絶無であることも明らかにしましたし、ホームドアの設置が進まない理由は、現状の「飛び込み自殺」の頻度程度ではペイしない、ということも示しました。

 ところで今回、再度、ホームドアのコストについて検討を試みました。

 以下は、「鉄道人身事故に打つ手なし!? 数字が語るその理由」の図版を再掲したものです。

 この時は、鉄道会社の視点から計算しましたが、これを乗客の視点に転換し、「もしホームドアのコストが、運賃に上乗せになったとしたら」という仮定に基づいて、現在の私の通勤のケースに落として、再度計算してみました。

 以前は、鉄道会社の利益から勘案したのですが、今回は、私のお金で計算してみました。まあ正確に言うと、交通費は会社が負担しているのですが、会社のコスト増にはなります。学生の通学であれば、そのコストは家計を直撃します。

 人身事故による遅延は、規模の小さい(というか、私には大きく影響しない)ものについては、結構頻繁に発生しておりますので、上記の計算は単純化しすぎているかもしれませんが、「『殺意を覚える』ほどの列車の遅延」は、やはり少ないのです。

 「『殺意を覚える』ほどの電車の遅延」が、もっと頻繁に(ほとんど毎日)発生するような状況であれば、1万円ちょっとの支払いは、当然にペイしますが、今の人身事故の事故件数は、「前回の殺意が消滅しないうちに、新しい殺意が発生する」という程度ほどには、頻繁に起こってはいないのです。

(3)飛び込み自殺の「コスト」の数値化

 これについては、他の自殺方法との比較(「だから減らない? 鉄道への飛び込みは“お手軽”か」)で記載した、「飛び込みの苦痛は最小」との見解を、前回前々回の「飛び込みシミュレーション」の結果を受け、『考えうる最大限の残酷な苦痛』に180度の方向転換をしました。

 今回まとめてみて、飛び込み自殺は、(1)準備が簡単で、(2)実施は難しく、(3)苦痛は最悪、という特徴があることが分かりました。この表を眺めているうちに、これは、消費者金融のCMと返済地獄とよく似ていることに気が付きました。

 飛び込み自殺の「コスト」検討から導いた、私の総括を、消費者金融のCM風に語ってみたいと思います。

  • 自殺(×契約)内容をよくご確認ください
  • 準備と実施と苦痛(×収入と終始)のバランスを大切に
  • 無理のない自殺(×返済)計画を
  • 「飛び込み自殺 Q&A冊子は、ここから入手可能です

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