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» 2019年12月26日 09時30分 公開

この10年で起こったこと、次の10年で起こること(41):2チップを同時開発するHuawei ―― 2019年新チップ解剖総括で見えてくるメーカー間の差 (1/3)

今回は、2019年に登場した新しいプロセッサの開封/解析結果を振り返り、そこから浮き彫りになってきたことをいくつか紹介したい。

[清水洋治(テカナリエ),EE Times Japan]

5G、AI対応プロセッサの商用化元年になった2019年

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 2019年はさまざまな新しいプロセッサが登場した。AI(人工知能)アクセラレーター、5G(第5世代移動通信)ベースバンドプロセッサ、カメラ画像合成などであり、2019年が商用化元年となったわけだ。しかも多くは7nmや8nmといった微細化プロセス技術を用い、1チップに100億個近いトランジスタを搭載する。さらにEUV(極端紫外線)リソグラフィを用いて製造されるチップも現れた。AMDが第3世代のRyzen CPUやGPURadeonにも7nmプロセスを活用して製品を続々とリリースしていることからも2019年は7nmが主流となり、5Gが一気に製品化された1年であったわけだ。

 5GはSamsung ElectronicsのShannon5100プロセッサ、QualcommのSnapdragon X50、中国HiSiliconのBalong5000が2019年前半に適応され、多くのスマートフォンに活用された。これらはともに従来のアプリケーション+LTEを1チップ化したプロセッサとは別に用意され、SamsungではExynos9820+Shannon5100、QualcommはSnapdragon855+X50、HiSiliconではKirin980+balong5000で活用された。1チップ化はトランジスタ数が増えてしまい、チップサイズが大きくなるので欠陥密度などの点で歩留まりが低くなってしまうなどの懸念があり、まずは2チップ構成で5Gはスタートした。

 5Gサービスはスタートしているが、まだ局所サービスにとどまっていて現時点ではまだまだ4G(LTE)の利用がほとんどだ。そのため2019年モデルの話題のスマートフォン(AppleのiPhone11やGoogleのPixel4など)は5G非対応のものが多い。一方で中国大手はすべてが5Gスマートフォンをリリースしているという対局的な状況だ。OPPO、VIVO、ZTE、Xiaomi、Huaweiなどは5Gスマートフォンをリリースし、すでに日本円で5万円を切る価格のものもあるほどだ。

5G非対応「Mate30 Pro」に搭載されるKirin990

 図1は、2019年9月に発売になったHuaweiのフラグシップスマートフォンMate30 Proの基板の様子と開封したメインのプロセッサである。

図1:2019年第3四半期に発売されたHuawei「Mate30 Pro」の基板とメインプロセッサ (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 Mate30 Proは5G通信を備えておらず、活用されるプロセッサKirin990にも5Gモデムは搭載されていない。パッケージを基板から取り外すと2個のパッケージが重ねられている。上のパッケージにはメモリ、下のパッケージにはプロセッサが配置される。Package On Packageという実装方式が用いられる。図1下部中はメモリ側、右はプロセッサ側のパッケージモールドを薬品で取り除いた写真である。メモリ側は1GバイトのLPDDR4Xの2枚重ねが4カ所(四畳半スタイル)で配置され、計8Gバイトの容量を持っている。プロセッサ側はガラスエポキシ樹脂(以下、ガラエポ)上の実装になっている。これら2つがパッケージ接続されている。図2はガラエポから取り外し、洗浄、配線層剥離を行ったKirin990のチップ写真と配線層剥離前に顕微鏡で撮影したチップ上の製品ロゴ(型名など)情報の拡大である。チップ上にはHi3690V100の文字がある。

図2:7nmプロセスで製造される4Gモデム内蔵Kirin990(クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 Kirin990は製品名称で、実際のシリコン名称はHi3690になる。実際にはHiSiliconのプロセッサは初代のK3がHi3610というシリコン名称でスタートした。その後、シリコン名称は世代ごとにHi3620、Hi3630とカウントアップを重ねており、KIRIN990/Hi3690は9世代目ということになるわけだ(ちなみに弊社では全チップの写真および型名の写真を持っている)。

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