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» 2020年07月07日 11時30分 公開

湯之上隆のナノフォーカス(27):1nmが見えてきたスケーリング 「VLSI 2020」リポート (1/7)

初のオンライン開催となった「VLSIシンポジウム 2020」から、スケーリング、EUV、3D ICの3つについて最新動向を紹介する。

[湯之上隆(微細加工研究所),EE Times Japan]

夢か? 悪夢か?

 当初、ハワイで開催される予定だった40周年記念の「VLSIシンポジウム 2020」が6月15日〜18日、オンデマンドとライブを併用したバーチャル方式で行われた(図1)。

図1:バーチャルで開催されたVLSIシンポジウム2020 出典:VLSIシンポジウムの記者会見資料(クリックで拡大)

 VLSIシンポジウムの特徴は、半導体デバイス・プロセスのTechnology Symposiumと回路のCircuit Symposiumが同時に開催されることにある。これら以外にも、その時代のトピックスを集めたShort CoursesやWork Shops、TechnologyとCircuitを融合したJoint Focus SessionsやJoint Panel、最終日のFriday Forumなどが行われる。

 今回のVLSIシンポジウムでは、6月29日まで視聴可能なオンデマンド・セッションが53あった(図2)。また、基調講演となるPlenary Sessions、Panel Sessions、Executive SessionsおよびQ+A Eventsなど40のライブ・セッションが行われた(図3)。

図2:53のオンデマンド・セッション 出典:VLSIシンポジウムの記者会見資料(クリックで拡大)
図3:40のライブ・セッション 出典:VLSIシンポジウムの記者会見資料(クリックで拡大)

 ライブ・セッションは、アジア、米国、欧州から比較的視聴しやすい時間帯(シフト)を設けて開催された。具体的には日本時間午後10時〜午後11時の「ジョイント・シフト」、深夜0時〜午前2時50分の「NAEシフト」、午前9時0〜午前11時50分の「JFEシフト」が組まれ、それらの時間帯に行われた。もし、ライブ・セッションにフル参加するなら、連日睡眠不足になる覚悟が必要だった。

 そして、注目すべきは、予稿集はもちろんのこと、ほぼ全ての発表スライドがダウンロードできるようになっていたことである。通常、ショートコースでは発表スライドが配布される。しかし、本会議の発表スライドが配布されることは、まず無いと言っていい。

 そのため、筆者はこれまで参加した国際学会で、どうしても本会議の発表スライドが欲しいと思ったときは、発表者に「あなたの発表を記事に取り上げたいからスライドを頂けないか?」と個人的に頼みに行った。そして、1回の国際学会で、発表スライドをもらえるのは、せいぜい5件程度だった。

 ところが、バーチャル学会となった今回のVLSIシンポジウムでは、ほぼ全ての発表スライドが配布されたのである。従って、「これは、夢ではないか?」と思った。

 その一方で、配布された発表スライドは、259件もあった。発表は、1件当たり30〜50枚のスライドで構成されている。オンデマンドでの発表時間は、ショートコースが1件約40〜50分、本会議などが1件20〜25分であり、259件全てを1人で視聴することは、とてもじゃないができない。従って、この膨大なスライドを前にして、「これは、悪夢だ!」とも思った。

情報の洪水に溺れる!

 そして、学会の開始とともに、オンデマンドやライブ・セッションが始まることを知らせるReminderメールが69件も届いた。さらに、ライブ・セッションが終わったことを告げる“Sorry you couldn‘t attend this Webcast”というメールも40通に達した。その他のお知らせの7件を含めると、4日間に、実に116件のメールが雨あられと送り付けられたわけである。

 今回のVLSIシンポジウムの参加者は、ショートコースが686人、本会議が1021人と、いずれも過去最高を記録した(図4)。初のバーチャル学会となったVLSIシンポジウムでは、自宅のPCで学会に参加できるため、そのメリットが参加者の増大になって表れたと考えられる。

図4:VLSIシンポジウムの参加者数の推移 出典:VLSIシンポジウムの記者会見資料(クリックで拡大)

 しかし、これらの参加者が全て、筆者と同様に、マシンガンのように送られてくるメールに驚き、259件の発表スライドという情報の洪水に溺れたと思われる(少なくとも筆者はパニックになった)。

 VLSIシンポジウム史上、初のバーチャル開催となった今回は、運営委員の方々も、手探りの状態だったのかもしれない。バーチャル学会は、自宅にいながら参加できるし、期間中ならいつでもオンデマンドの発表を視聴することができる。さらに、ほぼ全ての発表スライドが入手できたことも夢のようである。とはいえ、バーチャル学会の運営方法には、改善の余地があると思う。

 来年(2021年)以降、新型コロナウイルスの脅威が去って、リアルな学会を開催できるとしても、筆者としては、リアルとバーチャルの併用を期待したい。やはり、バーチャルには非常に大きなメリットがあるからである。しかし、バーチャルの運営方法については、お知らせメールを必要最小限にとどめるなど、工夫をお願いしたいと思う。

 以下では、筆者が注目した発表のいくつかを紹介したい。ただし、全てを視聴するのは不可能だったため、スケーリング、EUV(極端紫外線)、3D ICの三つに対象を絞ったことをお断りしておく。

注)筆者と同様に、情報の洪水に溺れた人たちの要望があったためか、オンデマンドの視聴期間が6月29日から8月31日に延期された。

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